子供達が安心して食べられる食材を:矢定雄平さん

国富町八代で養鶏(卵)を中心に、千切り大根や大豆、小麦を生産している矢定雄平(やさだ ゆうへい)さん。
神奈川県の出身で、農業とは無縁の世界にいた矢定さんが、宮崎県国富町に移住し、農業を始めることになった経緯や、これまでの経験について聞きました。
ラグビー漬けの延長で海外へ
高校生のころ始めたラグビーが、矢定さんの人生を大きく左右します。
大学を選ぶにも、ラグビーの強豪校をピックアップして、片っ端から受験したほど。
矢定さんの10代〜20代は、ラグビーのための人生と言っても過言ではありません。
大学卒業後、当時付き合っていた今の奥さんが、ニュージーランドへ留学するのをきっかけに、自身も貯金をして後を追います。
きっかけは、やはりラグビー。
ニュージーランドの代表チームに憧れ、何度も試合を観戦するためにスタジアムへ足を運んだそうです。
1年後に帰国した矢定さんの次の目標は、オーストラリアへ行くこと。
そのために必要なお金を、アルバイトをしながら集めます。
お金を貯めた矢定さんは、奥さんと結婚し、新婚旅行という感覚でオーストラリアに向かいました。
オーストラリアでは、地元のラグビーチームに所属し、チームの年間最優秀選手に選ばれるほどの活躍をします。
海外で養った度胸
矢定さんに、海外での生活やラグビーを通して学んだことを尋ねると
「自分より体格の大きな選手に向かっていける度胸」
「型にはまらず、自分らしく生きること」
と、答えます。
海外の選手は、矢定さんのことを片手で持ち上げるような選手ばかりで、そのような選手にボロボロになりながらも向かっていけるのは、チームのため。
「自分を犠牲にしてでもチームのために」
この感覚は、今でも根強く残っているそうです。
出産〜帰国
新婚旅行感覚で向かったオーストラリアの国民性などに惹かれ、4年間滞在することになります。
きっかけはワーキングホリデーだった矢定さん。
宿はシェアハウスやテントなどを利用し、様々な異国文化に触れてきました。
32歳になった矢定さんは、お子さんが産まれるのをきっかけに帰国します。
地元神奈川に戻った矢定さん。
お子さんの誕生が、その後の矢定さんの人生を大きく左右することに。
子供が安心して食べられる食材を
帰国後、日立の子会社で営業をしていた矢定さんは、
「俺がしたいのは、これじゃない」
と、思うようになります。
そんな時に出会ったのが農業。
「子供たちに安全な食を自分の手で」
そんな想いが募り、地元の農家さんのもとで1年間修行しますが、いざ農業を始めようとすると神奈川県には土地も少なく、厳しい現状でした。
そこで、移住したのが奥さんの地元国富町。
矢定さんは、国富町で第二の生活をスタートさせます。
あんちゃんが悪さしてる
矢定さんには、地方で生活すると「ヨソ者に対して厳しい」という印象がありました。
そうならないために、とにかく地区の行事への参加や挨拶周りを徹底。
実際にコミュニケーションを取ると親しみやすく、都会より人同士の繋がりが深く心地良い。
どことなく、オーストラリアの国民性と近いものを感じたと口にします。
そんな矢定さんが一番苦労したのは方言。
「あんちゃんが悪さすっとよー」
どこかのヤンキーが悪さしてるのかな?と思ったそうです。
この「あんちゃん」とは、方言で「猿(さる)」のこと。
「名詞が分からないから、全然話についていけなかった」
そんな矢定さんも、今では国富の方言が飛び交う場でも、問題なく会話についていけるようになったそうです。
当たり前にご飯が食べられる幸せ
矢定さんが、農業を初めて一番痛感することは当たり前にご飯が食べられることへの感謝と言います。
まだまだ記憶に新しい東日本大震災。
都心部では、食料を求めてデパート前に行列ができます。
お金はあるのに、食料を確保できない…
いつでもご飯が食べられるという今の生活は、本当の意味で豊かな生活。
「お金があるから豊かな生活」だとは言い切れない。
流通を独自で開拓
一般的な農業は、農協に出荷するそうですが、矢定さんは農協に頼らず、自分で飛び込み営業をしながら顧客を確保しています。
国富町はもちろん、関東にも出荷している矢定さんは、
「飛び込み営業が好きなんだよね(笑)。自分の強みを直接相手に伝えられるから」
と、言います。
ラグビーや海外での生活で身についた度胸が、今でも活かされているのでしょう。
地元の保育園や幼稚園にも出荷しており、一番身近なのは三名保育園。
矢定さんの卵を給食用に出荷しているそうです。
あなたの卵しか食べられない
矢定さんの卵が保育園や幼稚園に選ばれている理由は「安心・安全」。
ニワトリが食べる餌にもこだわり、化学物質や抗生物質は一切使用していません。
そのため、卵アレルギーのお子さんも矢定さんの卵なら食べられるというケースが少なくないそうです。
卵アレルギーと言っても、実際は中に含まれる化学物質などにアレルギー反応を起こすお子さんもいるからです。
「自分の育てたものに自信があるから、飛び込み営業が苦じゃないのかもね」
「嘘をつく必要もないし」
そんな、自信が持てる卵をこれからも生産していき、販路を拡大させていきます。
県外のお客様からも
「あなた(矢定さん)の卵しか食べられないわ」
と言われるほど人気沸騰中です。
宮崎市内だとモールヒロセで毎週火曜日に購入できるとのこと。
即日完売だそうなので、欲しいという方はお早めにー!
新たな業界への挑戦
矢定さんは、神奈川の実家を利用して製菓を始めるとのこと。
使う小麦などは、やはり自身で生産したものです。
「さしもす」と名付けた店舗は、お子さん4人の名前から頭文字を取って決めたそうです。
シフォンケーキを売りとして、安心・安全をモットーに全国の自然食品館や飲食店などに出荷予定。
この製菓への挑戦が、矢定さんにとって今年最大の勝負所だと感じているとのこと。
まずは4月1日に神奈川県で開催される「オーガニックマーケット」に出品し、矢定さんの想いに共感してもらえる販売店や飲食店との繋がりを深めていきます。
いつの日か地元のお菓子屋さんでも目にするような人気商品になることを楽しみにしています。
終始「人のため」という想いを熱く語ってくれた矢定さんが、これから誰のためにどんなことをしていくのか。
そんなワクワクする未来を想像させてくれる人との出会いでした。
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