2人で築く1つのカタチ:中村俊明・真由美夫妻

国富町深年にある法華嶽公園の麓で株式会社アート・アマネを営む、中村俊明さん、真由美さん。
じゃぶんこ広場から歩いて1分程度の工房で、陶器を中心としたアート制作をおこなっています。
それぞれ陶芸とは違う道を進んでいた中村夫妻。
今では、海外の展覧会にも出展するなど、活動の幅を広げている中村夫妻が、アートを通して伝えたいことや大切にしている想いを聞いてみました。
陶芸とは無縁の道へ
中村夫妻は高校卒業後、俊明さんが和食料理の板前さん、真由美さんが美大から服飾デザイナーの道に進みました。
特に俊明さんは、芸術と無縁の業界に進んではいましたが、料理とお皿は切っても切れない縁なので、興味はあったと言います。
真由美さんも服飾デザイナーとして、30歳まで東京で活躍。
20歳から親しくしているお2人が、宮崎に戻って一緒に陶芸の道に進むとは考えてもみませんでした。
なんとなく宮崎、そして国富へ
俊明さんは宮崎市、真由美さんは佐土原町と、それぞれ国富町外の出身です。
国富町に来たきっかけは、真由美さんのお父さんが活動していた今の工房。
真由美さんは、宮崎に戻り両親と仕事をするようになります。
そこへ、何となくやってきたのが俊明さん。
宮崎に戻り、実家の造園業を手伝うなどしながら、やりたいことを探していたそうです。
「カタチに残るものを作りたい」
そう思っていた俊明さん。
陶芸を1度体験したら、すぐに夢中になってしまいました。
「これだ!」
帰郷した翌年には結婚し、2人での共同制作がスタートします。
独学で見つけた私たちらしさ
俊明さんは特に、陶芸の経験が全くない状態で制作がスタート。
当然、ロクロの使い方も何も分からない状態です。
同じ作品を作るにしても、工程が分からない。
とんでもない遠回りをしながら、何とか1つの作品が完成するも、同じように作れない…。
そんな中でも、諦めず独学で陶芸について勉強し、少しずつスキルを磨いていきました。
そこから10年。
中村夫婦の作品が並べられた展示場には、お2人のカタチが溢れています。
2人で作る1つのカタチ
アートアマネの作品は、真由美さんがデザイン・装飾をおこない、俊明さんが陶芸(形成)をおこないます。
新しい作品に着手する時には、デザインのラフを真由美さんが考え、それをもとに2人で討論。
2人が納得した段階から制作がスタートするのですが、必ず完成する訳ではありません。
いくら作ったとは言っても、思い通りにいかない、どこか納得できないものは日の目をみないこともあると言います。
たくさんの失敗から生まれた1つの作品。
それを知って鑑賞すると、作品に対する見方も変わってくるのではないだろうか。
国富で目にするアート・アマネ
真由美さんのお父さんが手がけた作品は、国富町に住んでいれば1度は目にしたことがあるのではないだろうか。
国富町図書館のロビーや文化会館、八代中学校の壁画は、真由美さんのお父さんの作品だ。
今度、そのような場所に訪問する機会があれば、改めてじっくりと作品を見てみたい。
メイドイン国富のアートが、町内を彩っています。
台湾の展覧会にも出展
中村夫妻の作品は、現在、台湾にも出展されており、今年の9月まで台湾内の都市7箇所を巡るそうだ。
将来は、海外の作品や文化にもたくさん触れたいと考えている中村夫妻。
国富町から世界へ向けて挑戦を続けている。
1月に台湾で行われたオープニングセレモニーでは、海外アーティストの作品を観ることができ、刺激を受けたそうです。
とくに驚いたのが、台湾で人気なのが水墨画だということ。
水墨画というと、白黒で風景画などの印象ですが、台湾の水墨画は、カラーで抽象画が目立ちます。
そのような異色の作品と触れ合うことで、お二人の感覚が研ぎ澄まされていく。
若者には敵わない
現在、宮崎県の陶芸協会で会長を務める俊明さん。
後継者不足問題は、陶芸の業界でも起こっている事だと言います。
その中で、
「若者の着眼点はすごい。あれには敵わない。」
と2人そろって口にします。
自分たちが築いてきた“当たり前”を見事に打ち崩される感覚。
そのような若者の作品が国内でも多く出展されているそうです。
作品から感じる想いや、コンセプト。
それを大切にしている2人にとって、若者の存在は脅威でもあり、良い刺激になっている。
どう生きていくか
中村夫妻が作る作品には、「自在の花(じざいのはな)」という、一貫したテーマがあります。
「自分の花を咲かせましょう。」
「ありのままの自分で良いのだよ。」
そのような想いが込められていると言います。
お2人にとって、仕事がどうあるべきかということは問題ではない。
大切なのは、「どう生きていくか」。
自分の生きている人生が豊かだと思える生活なら良い。
その想いを作品に込め、世界中に羽ばたいていくのです。
誰でも気軽に陶芸体験
アート・アマネでは繁忙期である個展前を除けば、いつでも電話予約で陶芸体験ができるそうです。
5名からにはなりますが、実際にプロのアーティストから教わりながら、陶芸から装飾まで楽しむことができます。
俊明さんのように、体験から陶芸の魅力に触れ、陶芸家になるという人が出てくる場になると思うとワクワクします。
国富町がアートの街になることも、夢ではないと思える中村夫婦との出逢いでした。
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