畜産農家の嫁も楽しくやってるよ♪:一万田美保さん

農業

国富町本庄で和牛の繁殖をしている一万田美保(いちまんだ みほ)さん。
高鍋高校の畜産科を卒業後、ずっと牛に関わる仕事をしてきました。

旦那さんの祖父母も80歳ながら、機械も乗りこなすバリバリの仕事一家に嫁ぎ8年。
一万田さんの仕事に対する想いを伺いました。

夢は動物園の飼育員さん

中学卒業後に、高鍋農業高校の畜産科へ進学した一万田さんの将来の夢は、動物園の飼育員さん。
幼少期から動物が好きで、動物と触れ合える仕事をしたいと思い進学を決意します。

そんな一万田さんが牛に関わる仕事を始めたきっかけは、高校時代の経験です。
授業の一環として、それぞれの牛に担当の生徒をつけ、お世話をすることになります。

日々、担当の牛と触れ合ううちに、将来は牛と一緒に仕事がしたいという想いの方が強くなっていきました。

ちなみに、今の旦那さんは高校時代の同級生。
まだ当時は男友達としての1人だったそうです。

もう牛とは関わりたくない!

一万田さんは高校卒業後、牛の飼育をする会社に就職します。
少しでも早く仕事を覚えたかった一万田さんは、就業時間外にも牛の様子を見て、自分自身の“牛を観る目”を養おうとしたそうです。

それでも仕事に慣れず、先輩から毎日のように怒られる日々…

そんな中でも仕事を続ける原動力になっていたのは、その会社に入社する前、

「あんたも3ヶ月くらいで辞めるんじゃないの?」

と、周囲に言われた一言でした。
今辞めたらきっと「やっぱり」と言われてしまう。

それが一万田さんは我慢できなかったそうです。

「4年間は頑張るんだ!」

涙を流しながら、意地でも仕事を続けました。

なんとか、仕事を4年間やり遂げた一万田さんは心も体もボロボロ…

「もう、こんなにツライ思いをするなら牛に関わる仕事はしたくない!」

そう思い、退社後は1年ほど牛との距離をおくことになります。

やっぱり牛が好き

牛との距離を置いていた一万田さんに声を掛けたのが今の旦那さん。

「あそこで働いてみたら良いと思うよ」

紹介してくれたのは国富町の会社で、牛の赤ちゃんにミルクをあげる仕事でした。
その時に、忘れていた感情が呼び起こされます。

「やっぱり牛が好きだ」

そう感じた一万田さん。
当時友人だった今の旦那さんも実家で牛の繁殖をやっていたこともあり、頻繁に実家の牛舎へ行き、牛を見せてもらっていたそうです。

何度も足を運ぶうちに、旦那さんの家族とも仲良くなり、気付けば交際に発展し結婚します。
牛が巡り合わせてくれた2人の出会いでした。

昼の牛舎は女性の持ち場

一万田さんの牛舎ですが、昼間はほとんど女性だけで仕事をしているそうです。
男性は「削蹄師(さくていし)」をしており、他の牛舎へ出向いているからです。
※削蹄師(さくていし)・・・せりに出す牛の爪を切ったり毛並みを整える人。いわゆる牛のトリマー。

「とにかく、女性(家族)みんな仲が良い」

そう口にする一万田さん。
牛舎には、(旦那さんの)祖母・母・弟の奥さんと一万田さんの4人。

全員が一万田家に嫁いできた身です。
その4人の関係性がとても良好で、仕事も家庭も楽しくて仕方ないそうです。

「「農家の嫁に嫁ぐと大変だよねー」っていう人の気持ちが分からない」

「こんなに仕事が楽しいのは、祖父母や両親のおかげかなぁ」

と、一万田さんは口にします。

特に祖母の代は、昔の風習が根強く残り、酷い仕打ちをされたこともあったそうです。

しかし、一万田さんが同じような経験をしたことはないと言います。

それは、若い子たちに自分と同じような想いをして欲しくないという、先輩たちの思いやりでした。

 

ちなみに、「1番の働き手は?」と質問すると迷わず、

「(80歳になる)おばあちゃん!10時の休憩にも気づかないくらい働いている」

なるほど。
大先輩がそんなに頑張っているのに、手を抜くわけにはいきませんね。

同業の女性を集めたコミュニティー

一万田さんは、自らが発起人となり牛の繁殖をしている農家さんに嫁いだ奥さんを集めて、持ち回りで牛舎を見て回るという活動をしています。
「牛ガール(仮)」と名付けたコミュニティーは、国富町と綾町で牛の繁殖をしている同年代くらいの女性を集めたコミュニティーです。

同業の人の(と)…
「名前は知っているけど会ったことがない」
「話してみたいけど話す機会がない」

そんなことを考えていた一万田さんは、それぞれの牛舎に出向き、仲間を増やしていきます。
現在は8名程度のメンバーで、お昼の時間帯に仕事の合間を見て月に1回程度それぞれの牛舎を見て回ります。

「同じ仕事をしているから、同じような悩みを共有できる」
「他の牛舎から学ぶことがたくさんある」

この活動により、同業間でのコミュニケーションが取れると同時に、そこに関わる繁殖農家さんの底上げになることは明白です。

「昔は、他所の牛舎を見に行くことすら許されない時代だったかもしれない」
「だけど、家族は快く受け入れてくれた」

そんな家族の理解があるからこそ、このような活動ができていると言います。

田舎だからできることを子供たちに伝えたい

3人のお子さんを持つ一万田さん。
長男は小学生で、友達とよく近くの川で釣りをしているそうです。

「田舎の生活が楽しくて仕方ない」

そんな一万田家は、ほぼ自給自足のような生活。
スーパーで買い物もしますが、自宅の畑で野菜を育て、食べるものはほとんど自分たちで育てているらしい。

「お母さん!スーパー行ったら白菜が300円近くするよ!」
「普段から(白菜を)何も考えないでバクバク食べてるから感覚が鈍ってるねー」

そんな話が話題になるほどです。
自宅のお風呂は五右衛門風呂で、炭窯では手作りの炭やお皿を作ります。

そのような生活だからこそ、家族・自然に対するありがたみが生まれ、人生が豊かになると考えているのです。

田舎特有だった地域の繋がり…

それも近年では薄れてきて、地元の人同士でコミュニケーションをとる機会も減ってきました。
だからこそ一万田さんは「牛ガール」を立ち上げたのです。

たくさんの若い世代に知ってほしい

近年は、国富町で働きたくない、働くところがないという若い世代が多く見受けられます。
しかし一万田さんは、

「仕事がないのではなく、仕事に触れていない、知らないだけ」

と、その想いを口にします。

日頃から、SNSで日々の様子を発信する一万田さんに、なぜ発信することが重要だと思うのかと尋ねると、

「有名になりたい訳ではなく、とにかく(仕事を)知ってもらいたい。」
「発信しないより、発信した方が良いから」

牛の繁殖という仕事は、正直地味な仕事が多いかもしれませんが、それ以上に喜びや楽しみが多く隠れていると言います。

地元の学生を巻き込んで、農業体験をしたいという願いもある一万田さんは、これからも発信し続け、未来を担う子供達のために活動を続けていくのでしょう。

もちろん一万田さんが行動するには、家族の理解と協力が不可欠です。
家族に対する感謝の気持を、終始口にしていた一万田さんでした。

 

 

 

有田 匠興

宮崎県国富町出身・在住の地域ライターです。 「国富町を通過点から目的地へ」 というテーマのもと、国富町で働く人たちを取り上げ、発信していきます。

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