キュウリの花を摘もうとした部会長:福永康博さん

農業

福岡のサラリーマンが脱サラ後に農業の世界へ

福永康博(ふくなが やすひろ)さんは、宮崎中央農業協同組合で「本店 野菜連絡協議会」「国富支店 胡瓜部会」などで会長を務める、国富町八代のキュウリ生産者です。
実家も国富町八代ですが、18〜27歳まで福岡県で会社員をしていました。警察官の兄と自衛隊の弟を持つ福永さんは、結婚を機に故郷へ戻ることを決意。両親のもとで農業を始めました。

ゼロからのスタート「この花は切って良いの」

福永さんが帰郷した当時、両親は路地(ビニールハウスを建てず畑で栽培すること)で大根などを育てていました。それを一緒に7年間続けたある日、知人の生産者から

「キュウリやったら?(福永さんなら)大丈夫やがー」

と、声をかけてもらい、土地も何もない状態から、福永さん単独でキュウリの生産がスタート。
しかし、当時の福永さん一家はキュウリを作った事もなければ、ビニールハウスも持っていません。
全てが未知の世界で、「キュウリに花が咲いているけど、いらないから取っても良いかな?」と思ったほどでした。本当にチンプンカンプン…。

両親も知らない世界なので、福永さんは毎日のように差し入れを準備しては、近隣のキュウリ生産者のハウスを見学させてもらったそうです。

3年目の快挙

初めてキュウリを作った年にも、他の生産者よりも良い金額で販売することができ、

「他の人より苗を植えるのが遅く、出荷が遅れたのが運よく当たった」

と、謙遜する福永さんだが、それまでの努力は想像を超えるものだと思います。
その証拠に、周囲のアドバイスを受けながら、とにかく必死にキュウリの世話を続けた福永さんは、なんと3年目に国富町で1番の成績を取ったのです。
今ではキュウリ生産20年の経験と実績をもとに国富町だけではなく、宮崎県でもトップクラスに君臨する重鎮です。

宮崎県産ブランド「ワンタッチきゅうり」

宮崎県が15年ほど前から推奨しているブランド「ワンタッチきゅうり」。しかし当時の認知度は低く、商品の箱にも名前の印字がないため、消費者は、どれがワンタッチきゅうりか判断できなかったそうです。
そこで4年前に福永さんらが前面に立ち、商品の箱をリニューアルしたことで認知度が急激にアップしました。

ワンタッチきゅうりの意味は「ワンタッチ」。つまり、生産者が一度触れた後、消費者が手にするまで誰も触れないという意味。
キュウリは、表面のトゲ(イボ)が傷つく(取れる)と、そこから水分が抜け鮮度が落ちるという。
その鮮度を最大限保つことができる県産ブランドです。

昨年4月に放送されたNHKの「うまい!」でも特集を組まれ、福永さんが取材を受けています。

↓NHK番組「うまい!」特集ページ↓
http://www6.nhk.or.jp/umai/archive/archive.html?fid=225

夫婦で踏ん張った12,000個

キュウリの生産は、1人あたりの面積として10a(アール)が適正らしい。
それに対し、福永さんは夫婦2人で30aと、約1.5倍の面積です。

苦労話を尋ねてみると、真っ先に「ツルおろし」という返事がありました。
キュウリのツルが伸び、ある程度の高さになると、それ以上の高さにならないように、ツルを固定しているクリップを付け替えて高さを調整するそうです。それが全部で約12,000個…

途方も無い数を前に、毎日夫婦2人で朝から晩まで働いていたそうです。

 

休みは無いけど労働もしてない

福永さんは、仕事を労働と思わないようにしているとのこと。あえて言うなら仕事をスポーツと思っているそうです。
仕事を労働と思った瞬間にツライものになってしまうので、例えば収穫だったら

「今日もダイエットのためにスクワット頑張るぞー」

と、思うそうですが、仕事そのものが好きという想いが強いようです。
趣味などで息抜きなどしているのか尋ねると、

「仕事かな。嫌いなものなら続かないし、やってもいない。」

ゴルフも趣味で、打ちっ放しで汗を流すそうです。
結局スポーツなのですね(笑)

1日サボるとランクが1ダウン

毎日(夏場など気温が高い日は朝夕2回)収穫する必要があるキュウリですが、ちなみに1日収穫をサボったらどうなるのか気になり聞いてみました。
なんとサイズが1.2〜1.3倍(夏場は2倍)になるのこと。

それは、ランクが1つ以上下がることを意味するそうです。
ランクの低いきゅうりを、いかに減らすかということを大切にしていく生産者からすると死活問題です。
キュウリの状態が気になると、夜中だろうがハウスに向かうほど気を使うとのこと。

スマホで簡単にハウス管理

福永さんのハウスでは「アグリネット」を採用している。ハウス内の気温・湿度・照度・炭酸ガス濃度を測定し、スマホでチェックできる便利なサービスです。

これを導入したことにより、部会などの会議中や深夜にハウスの様子が気になっても、スマホ1つで簡単にチェックできます。月額使用料や年会費は必要らしいのですが、費用対効果は抜群だそうです。

上の写真が、ハウス内の気温・湿度・照度・炭酸ガス濃度を測定する装置。ハウスの真ん中あたりに設置され、福永さんの生産を影で支えている立役者です。

大事にしている言葉「報連相+K」

福永さんには大切にしている言葉があるのだそうです。
それが「報連相+K」。報連相はもちろん報告・連絡・相談。
では“K”とは?

それは…「K=確認」でした。
報連相をおこなうだけでは未完成、その後確認して結果を共有することが最も重要だと考えているそうです。

家族や仲間のおかげで楽できている

福永さんは現在、奥さんに加え娘さんと3人で仕事をしています。これまで2人で30aだったのが3人になり、かなり仕事量自体が楽になったそうです。

キュウリの生産量が落ち込む時期のために、桃の生産も新たに取り組みました。
その他、国富町の農業全体を活性化させるための活動も積極的に行っています。

生産者同士の繋がりも非常に良好で、全員で意見交換し、国富町の農業全体がスキルアップしているようです。
若手の生産者も含め、全員で農業を活性化していくことで、町全体が底上げできると信じ活動を続けています。

 

 

有田 匠興

宮崎県国富町出身・在住の地域ライターです。 「国富町を通過点から目的地へ」 というテーマのもと、国富町で働く人たちを取り上げ、発信していきます。

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